コラム

弁理士の仕事に関する情報を発信していきます

JP 拒絶理由に対応する補正案が複数あったとき

2020.09.02
star特許

例えば、拒絶理由が進歩性違反であり、その対応のために請求項1の補正が必要になる場合であって、補正案が複数あり、その複数の対応案が優劣付けがたく別の観点からの補正案であった場合、あなたならどうしますか?

私なら、それぞれの補正案を独立請求項として、例えば、新請求項1及び新請求項2として項立てをします。その理由は、特許査定の可能性の高い補正案を請求項1とし、他方の補正案を新請求項1の従属項とした場合、意に反して新請求項1が新たな拒絶理由をはらんでいると、新請求項2の特徴は、「設計事項」として拒絶となる可能性があるためです。

新規性・進歩性の拒絶理由を解消するための案が複数ある場合は、特許査定となるための確率を可能な限り上げておくことが肝要と考えます。

CN_中国への部分意匠登録出願

2020.06.24
star意匠

部分意匠を第1国出願とする意匠出願に関する中国での取り扱いについて

本記事は、中国の特許事務所 林達劉グループのLINDAからのニュース第55号(2011年10月)をもとにしています。現在、2020年6月時点で、中国はいまだ部分意匠登録制度を採用していませんので、下記記事は有効であると思われます。

中国は部分意匠制度を有しませんので、この点において日本や、米国、及び欧州などの意匠制度と異なっています。部分意匠を第1国出願とする意匠出願について、中国でどのように優先権を主張するのか、又はどのように最大限度の権利範囲を取得できるのかということは、出願人や代理人が最も関心が寄せている問題であり、悩まされている課題でもあります。この点について、筆者はここで私見を述べますので、読者の皆様の優れた意見を引き出すために少しでもお役に立てば幸いです。
第1国出願における部分意匠の図面又は写真について、どのように修正すれば中国において意匠出願に用いられ、優先権を主張でき、かつ予想可能な合理的な権利範囲を取得できるのかという問題のポイントは、意匠の同一主題の認定にあります。中国の特許審査基準には、意匠の同一主題の認定について、次のような規定があります。
意匠の同一主題の認定は、中国での後の出願に係る意匠とその第1国出願に表された内容に基づいて行われるべきです。同一主題に該当する意匠は同時に以下の2つの要件を満たさなければなりません。
(1)同一の物品の意匠に該当する。
(2)中国での後の出願に係る意匠は、その第1国出願に明確に表されていなければならない。
中国での後の出願に係る意匠とその第1国出願における図面や写真とが完全に一致してなくても、後の出願書類に簡単な説明があるのに対して先願の書類には関連する簡単な説明がなくても、両者の出願書類から、後の出願に係る意匠が第1国出願に明確に表されていれば、中国での後の出願に係る意匠とその第1国出願に係る意匠の主題が同一であると認定されることになり、優先権を主張することができます。
以下、具体的な事例を挙げながら説明いたします。
事例1
第1国出願が取っ手に関する部分意匠であり、破線でたんすが示されています。この第1国出願の優先権を主張して中国で意匠出願を行う際に、破線を実線に変更して、たんすに関する意匠出願を行うことが考えられます。また、たんすを削除して取っ手のみを残し、取っ手に関する意匠出願を行うことも考えられます。このように修正した2つの意匠は、いずれも第1国出願に明確に表されていますので、いずれも上記第1国出願の優先権を主張することができます。また、破線を実線に変更したたんすに関する意匠出願に比べて、破線を削除した取っ手に関する意匠出願のほうは権利範囲がより広くなります。

事例2
中国における後の出願においては、先の第1国出願において破線で表された2つの円孔、及び破線部分と実線部分の境界線が削除され、残った破線部分が実線に変更されています。

現在、方式審査の審査官も事例2に示すような修正を認めています。この修正について、方式審査の審査官は、後の出願における修正後の意匠の形状は、第1国出願の意匠に明確に示されているので、後の出願は第1国出願の優先権を主張することができると考えています。また、後の出願が出願時に提出した図面と第1国出願の図面と同一である場合、その後の補正手続きにおいて図2に示すように補正することも認められ、このような補正は新規事項の追加に該当すると指摘されることもありません。ただし、無効審判手続きにおいて、このようなケースはまだないのが現状です。
このように、部分意匠である第1国出願の優先権を主張して中国で意匠出願を行う際に、

(1)すべての破線を実線に変更して物品全体について意匠出願を行う
(2)実線で示された部分自体も意匠として出願可能な物品である場合、すべての破線を削除する
(3)破線で示された部分について限られている修正を行う
という3つの方法が考えられます。修正後の意匠は単一性の要件を満たす場合、同一の出願において2件以上の意匠を保護するように申請することもできます。これは、部分意匠である第1国出願の優先権を主張して中国で意匠出願を行う出願人にとって非常に有利であると思います。

権利範囲は、(1)<(3)<(2)になると思われます。

以上

消極的構成要件について(US, EP, JP_消極・Negative)

2020.06.23
star特許

消極的構成要件とは、「~を含まないことを特徴とする」など、クレーム記載において「ない」ことを特徴とする記載形式です。例えば、従来、処理液にフッ化水素酸を含むのが通常であったものが、他の安全な成分を追加して危険なフッ化水素酸を含まないような発明を表現するときに使います。

この場合、出願人側としては、引例としてないものを記載した引例は発見しにくいため有利となりますが、このような消極的構成要件を含む特許を無効にしたい場合は、逆に難しくなります。

このような特許を無効にしたいときは、下記の米国の判例が参考になります。

Int’l Bus. Machs. Corp. v. Iancu, No. 2018-1065 (Fed. Cir. Apr. 1, 2019).

WAG Acquisition, LLC v. WebPower, Inc., No. 2018-1617 (Fed. Cir. Aug. 26, 2019).

そのポイントは以下の通りです。
• 先行例文献にNegative claim limitation が記載されていないことを示すだけでは、Negative claim limitationが先行例文献で開示されていたという証明にはならない。
• しかし、先行例文献によるNegative claim limitation の開示は、明記(expressly)されていなくてもよく、暗示(impliedly)するものだったり、本質的な(inherently)ものであってもいい。
• 先行例文献において、Negative claim limitation は任意のものであったり、不必要なものであるという開示や示唆があった場合、その先行例文献によってNegative claim limitation の開示が証明できる。
• Negative claim limitation は任意のものであったり、不必要なものであるという判断は、先行例文献の開示内容によって判断される。
• 必要ではないが、先行例文献においてNegative claim limitationは必然的もしくは本質的なものであることを特許権者が示せれば、Negative claim limitationが先行例文献で開示されていないという反論ができる。

本コラム記事は、https://openlegalcommunity.com/negative-claim-limitation-prior-art/を参考にしました。

以上

 

 

 

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